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2020. 01. 16  

寒桜


日本人は昔から縁起を担いできた。その最たるものが正月行事だろう。新年が良い年でありますようにと初詣に出かけ、彩り豊かでめでたい食べ物づくしのおせち料理に舌鼓を打つ。

どの家も玄関にしめ飾りをして年神様を迎える。いい初夢を見るため、枕の下に宝船を描いた絵を入れる。夢は徳川家康にあやかり「一富士二鷹三茄子」が吉兆だといわれる。ほかにも商売繁盛を願う招き猫を飾ったり、合格や当選祈願のだるまを買い求めたりする。

ただこうした信心や習慣は日本独自ではなく、外国にだって同様の事例は多い。しかしながら日本人の縁起担ぎの傾向は傑出していることが、最近の脳科学研究で分かってきたという。

幸福ホルモンのセロトニンを調節するトランスポーター(運び屋)の遺伝子は、長さによってS型からL型まで3種類ある。S型は内向的で不安を感じやすく、L型は社交的で自主独立性が強い。

遺伝子は父親と母親から1つずつ、合わせて2つをもらってくるから、人によってL型を2本持つLL型、S型を2本持つSS型、そして、L型とS型を1本ずつ持つSL型に分類される。

もっとも幸福を感じやすいのはL型を2本持つ場合で、最も不安を感じやすいのはL型を1本も持たずS型だけを2本持っている場合だ。したがって、人種や民族、国民ごとにL型の遺伝子を平均で何本もっているかを調べれば、それぞれの幸福、あるいは不安の感じやすさを予測できるというわけだ。

2008年に発表された調査によると、日本人でS型の遺伝子を持ち(1本あるいは2本ともS型)ネガティブになりやすい人の割合は80%を超えており、調査対象となった29か国のなかで1位であった。45%に満たないアメリカやヨーロッパと比較すると日本人の遺伝子のネガティブぶりは際立っている。

では、なぜ日本人には不安の感じやすさに関わる遺伝子を持つ人がこれほど多いのだろうか。一つには、日本の災害の多さが遺伝子のタイプに淘汰圧を加えたと考えられている。神経質で、ことさら不安を感じやすい気質の人だけが生き延びてきたと主張する説は筋が通っているように思われる。

一方、不安になりやすいS型の遺伝子を持つ人の割合は、南アフリカでは27%に満たず、欧米の45%よりもさらに低い。さらに注意しなければならないのは、アジア各国では、70%以上の人がS型の遺伝子を保有しており、日本の数字は1位ではあるものの、アジアのなかでは際立ったものではなく、アジア系の民族は、遺伝子のタイプからみると軒並み不安を感じやすいということだ。

黒人がもっとも不安とは縁遠く、次いで白人が不安をあまり感じない。そして、アジア系はもっとも不安を感じやすい。この傾向は、人類発祥の地アフリカから遠く離れるほど、幸福を感じにくく、不安を感じやすくなっていく傾向があると言いかえることができる。

自然淘汰の結果、農耕や遊牧を始めたヨーロッパや中央アジアでは、不安を感じやすい遺伝子を持つ者が子孫を残せるチャンスが拡大した。さらに恵み豊かな土地を見つけたアジア人は、農耕に専念することで、より多くネガティブ遺伝子を持つようになった。自然選択は、未来を楽観してチャレンジするものよりも、不安を感じて今までの集団に留まる者の生存確率をあげたと言えるだろう。

今では「一生懸命」と表現されることが多いこの言葉は、もともとは「一所懸命」だった。武士が一か所の領地を命がけで守り、それを生活の頼りにして生きたことに由来する。そもそもこれは、ポジティブにチャレンジするよりも、今の土地に留まって現状を維持した方が得策だと考える農耕民族ならではの発想だ。余計なことは考えずにひたすら現状を維持するという文化的発想は260年の徳川幕府体制を通じて徹底的に強化された。

農民は農民らしく画一的であることが美徳とされ、人と異なることを、独自性を主張することは不道徳だとして恐れられた。恥の文化は、やがて武士社会から一般社会全体に浸透し、失敗することを、チャレンジできないことよりも恐れる価値観を定着させた。

江戸時代になるまでの日本には、戦国大名や堺の商人、東南アジアにまで勇名をはせた傭兵たち、失敗を恐れないチャレンジャーが多くいた。しかし、武家諸法度や融通の利かない士農工商制度に代表される、江戸幕府の徹底した政策によって日本人のチャレンジ精神は徹底的に封じ込められた。明治維新によって徳川幕府はなくなったが、「まずは失敗を避ける文化」は今なお健在である。

原因が遺伝子であれ文化であれ、不安になりやすいことは現代社会においてはデメリットが大きい。されど、松下幸之助やスティーブ・ジョブズ、そしてイチローも不安気質だと言われている。つまり、ネガティブな気質をもっているからといって成功できないわけではない。

ともあれ、「不安遺伝子」が優勢な日本人は、自分が成功した体験や古くからの縁起を尊重し、心を落ち着かせようとする。効果の程はさておき、気持ちはよく分かる。イチローの朝カレーや、ベンチから打席に立って構えるまでにある17のルーティンも不安気質からくる縁起担ぎである。


  一葉だに持たず咲き長け寒桜


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東洋占術歴47年になります。占い師とは「人を幸せに導く職業」だと思ってきました。同時に、多くの方のさまざまな悩み苦しみに接し、人ひとりが人生を生きく抜くことの困難さに思いを馳せずにはいられません。思えば私たちの人生はこころの旅であり、こころには喜びが必要です。こころがつらいとき、どんなに強い人でも自分を支えていくのは難しいことです。その苦しみからどうやって抜け出すか、私の占いが少しでもお役に立てれば幸いです。占いを通じて多くの方々の人生に接してきました。その喜びや哀しみに共感し、一喜一憂する日々はまた、私自身のこころの旅でもありました。

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